相続事例:相続人調査
Aさんは、若い頃から仕事に一生懸命で婚期を逃がし晩婚でした。
Aさんのお相手は、奥様と死別したBさん。
Bさんには4人の子供がいましたが、その当時すでに、いずれも成人していたし、4人のお子さんも結婚には賛成してくれたので、迷うことなく結婚しました。
Aさん56歳にして、やっと掴んだ幸せでした。
その後、年上のご主人であるBさんは先に亡くなりましたが、残されたAさんは、長男夫婦と孫たちと3世代で同居し面倒を見てもらっていました。
そしてある日、突然Aさんは天に召されることとなりました。
Aさんは長い間独身で子育てもしていなかったので、不動産は所有していなかったものの貯金も相当にあり、それなりの金融財産は持っていたのです。
葬儀後に長男が市役所に手続き行ったところ、ある事実が発覚しました。
継母であるAさんと4人の子供全員とは養子縁組がなされておらず、いうなれば戸籍上はただの同居人にすぎなかったのです。
もうお分かりですね。婚姻届を提出して夫婦になるということと、連れ子と戸籍上親子になることとはまったく別の届出が必要なのです。
こうなると、Aさん亡き現在となってはどうすることもできません。
配偶者が亡くなり当然にも両親も他界しているAさんの法定相続人は兄弟姉妹となり、実際、亡き姉の子供2人(甥と姪)と高齢の妹の3名が法定相続人となりました。
Aさんはもともと九州の生まれということもあり、3人の相続人は全員が九州に在住していました。預貯金の解約払戻や株券の名義変更など諸手続きに、相当な手間がかかったのは言うまでもありません。
また本来Aさんの長男がもらうべき遺産を、「離れて暮らしている私たちが受け取るのは忍びない」ということで、本来の相続人は結局、遺産のすべてをAさん一家に、贈与税がかからない範囲の金額で渡されたとのことですが、本来であればAさん一家は一銭も引き継ぐことができない状態でした。
戸籍謄本は、普段の生活ではお目にかかる機会が多くない公的証明書類です。
昨今では離婚も増加し、子連れで再婚する方も珍しくないと聞きます。お心当りのある方は今一度ご自身の戸籍を確認してみることをおススメします。
もちろん承知の上で養子縁組をあえてしないという方もいらっしゃいますが…。